八塩折の酒|映画シンゴジラのヤシオリ作戦の由来となった日本最古のお酒とは?

生半可な攻撃では全く効果がない、完全生物のゴジラ。
それに対する反撃として、日本政府に残された選択肢は、「ヤシオリ作戦」によって、ゴジラの活動を凍結させるしかなかった。
おなじみの在来線の電車が何台も血液凝固剤とともに、ゴジラに突っ込んでいく。。。
これは大ヒット作となった映画「シンゴジラ」の一節です。
実はこの「ヤシオリ作戦」の由来となる「八塩折の酒」
島根県を舞台にしたヤマタノオロチ退治の神話にちなんでいるのはご存知でしょうか。
目次
ヤマタノオロチ退治と八塩折の酒
古事記に記される出雲神話によれば、高天原を追われた素戔鳴尊(スサノオノミコト)は、出雲の国の船通山に降り立ちます。
斐伊川の上流に向かっていくと、ヤマタノオロチという八俣の大蛇に娘を食われてしまうと嘆く老夫婦に出会います。
聞くところによれば、ヤマタノオロチとは一つの胴体に、八つの頭と八つの尾を持つ巨大な怪物とのこと。
スサノオノミコトは奇稲田姫(クシイナダヒメ)を娶ることを条件に、ヤマタノオロチを退治することを約束します。
八塩折の酒で大蛇を退治する
スサノオノミコトは作戦を練ります。
まずは老夫婦に強い酒を作るように依頼します。
そのお酒でヤマタノオロチを酔っ払わせ、眠ったころを見計らって身体を切り刻み退治します。
晴れてスサノオノミコトはクシイナダヒメと結婚することになります。
この時、老夫婦の作ったお酒が「八塩折の酒」。
一説には古事記にも記されていることから日本最古の酒とも言われています。
八塩折の酒はどれだけ強いお酒なのか?
誰も倒すことができない怪物、ヤマタノオロチもメロメロにしてしまう八塩折の酒とは一体どれだけ強いお酒なのでしょうか。
その強さの秘密は、製法にあります。
八塩折の言葉の語源をみると、
「八」はヤマタノオロチのことではなく、「たくさん」の意味で、
「塩折」は「熟成させて絞る」の意味を表しています。
つまり、八塩折の酒とは、何度も繰り返して醸造した濃厚なお酒ということなのです。
酒で仕込む酒
その作り方は、まず熟成したもろみを絞って、ろ過して酒を作ります。
さらにその酒で仕込んで、また絞る、という作業を何度も繰り返して完成させます。
かなり高度な技術が必要とされ、仮にクシイナダヒメの父親が熟練の杜氏だとしても簡単なものではないようです。
娘の命をかけた、一世一代の伝説の酒と行っても過言ではないでしょう。
現代でも八塩折の酒を買える場所がある!?
恐ろしい怪物、ヤマタノオロチを魅了し、酔っ払わせてしまう八塩折の酒。
気になりますよね。
実は、その八塩折の酒を再現したお酒が現代でも販売されているのです。
國暉酒造の醸す現代版八塩折の酒
引用:國暉酒造ホームページ
こちらが、松江市内にある國暉酒造が作る「八塩折仕込み」です。
酒造で作った酒で、翌年の酒を仕込み、さらにそのお酒で翌々年の酒を仕込んで完成させる。
とろみのある甘口と芳醇な香りが特徴的で、食前酒、デザート酒としても楽しめるお酒です。
なお、少量しかできないため、毎年300本程度と限定した数量しか作られていません。
販売サイト⏩國暉酒造「八塩折の酒」
八塩折の酒はヤマタノオロチも骨抜きにしてしまう、濃厚なお酒だった
村を苦しめるヤマタノオロチを退治するために作られた八塩折の酒。
街を破壊し続けるゴジラを退治するために行われるヤシオリ作戦。
”ヤシオリ”とは、その土地を守る救世主の役割を果たしていたんですね。
手間暇かけて作られたその濃厚な香りと味で戦うのことも忘れさせてしまう八塩折の酒。
ぜひ一度、ヤマタノオロチの気分になって味わってみてください!