小泉八雲はなぜ島根を愛したのだろうか?対談ゲスト・小泉凡さん|トリセツシマネ通信
小泉八雲、ラフカディオ・ハーンという人物をご存知でしょうか?
へるんさんとして日本人に親しまれ、「怪談」により、日本各地の怪談話を紹介したことで有名な作家です。
しかし、作家としてだけでなく、ジャーナリスト、英語教師、旅人、プロデューサーとしてマルチな才能を発揮して日本文化を世界中に広めた人でもあります。
そんな小泉八雲の魅力と、なぜ島根を愛したのか?というテーマで、対談のライブ配信を行いました。
お相手は、小泉八雲の曾孫、小泉八雲記念館館長、小泉凡さん。
40分ほどの対談は以下の動画にて。
本記事では、対談の中で語られた内容を抜粋してお届けします。
目次
小泉八雲とは?
まずは小泉八雲の略歴をご紹介しましょう。
1850年 ギリシャ・レフカダ島で生まれる
イオニカ海に浮かぶ島で、松江の宍道湖の風景と似ている
当時ギリシャはトルコ領とイギリス領、レフカダ島はイギリスの自治領だった
2歳の時 アイルランドに移住
乳母キャサリンからケルト民族の話を聞き、妖精の世界に魅了される
14歳の時 左目を失明
1869年(19歳) 単身アメリカへ移住
フランス文学の翻訳やジャーナリストとして活躍
30代前半にフランス語に翻訳された「古事記」を読む
ニューオーリンズでの万博で日本パビリオンで関心を持つ
1890年(39歳) 来日
島根県の尋常中学校に英語教師として赴任
住み込みの女中として後の妻となる小泉セツと出会う(1896年の入籍)
その後、熊本、神戸、東京で暮らす
1904年 逝去
小泉八雲はなぜ島根を愛したのか?
小泉八雲が島根を愛した理由。
小泉凡さんは4つのポイントがあったとおっしゃいます。
①島根の風景=日本文化の原点
陰と移ろいがあり、霞んだ穏やかな、夢の中に差す光のような風景。
島根に当たり前のように存在する風景は、日本文化の原点であり、外国人の目線から見て衝撃的だったのでしょう。
②神話や怪談、古い習俗
島根には出雲神話が根付いていて、八雲が興味を持っていた古事記の世界とつながっていることが感じられたのではないでしょうか。
また、怪談話や古い習俗が今でも残っていることに感動を覚えたと思われます。
③食文化が合っていた
外国人にとって死活問題とも言える食料事情。
特に、西洋人には牛乳が飲めるかどうかは大きなポイントだったようです。
当時の松江では日本でも珍しく、牛乳配達がありました。
また、洋食レストランもあり、薬局でビール、ワインが売っていたことも八雲が安心するきっかけだったのでしょう。
④人々の優しさ
それまでの人生がずっと孤独だった八雲。
しかし、異国の地である日本で出会う人々は、みんな正直で頼れる人でした。
アイルランドの作家ショーン・ダンの『小泉八雲に捧げる聖なる場所』で、
His loneliness ended in Matsue (松江で彼の孤独は終わりを告げた)
と表現されている通り、松江にくることで八雲の人生は大きく変わったであろうことが想像できます。
小泉八雲の魅力
島根を愛した八雲の魅力について、凡さんからこんなお話もいただきました。
五感を使って日本を理解しようとした
10代の頃に左目を失明した八雲。
目が不自由な分、五感を大いに使って日本を理解しようとしました。
例えば、松江で暮らしていると聞こえてくる音。
薪を売る行商人、松江大橋を歩く下駄の音、勤行の音、鐘の響き、作業時のワークソング…
見たり、聞いたり、感じたりすることを繊細に感じ取り、文章で後世に伝えてきました。
書籍『知られる日本の面影』(1894年出版)では山陰地方の文化、人間模様を紹介。
アメリカで26回刷りなおされるほどベストセラーとなりました。
本作を含め、彼の著作は、明治時代の出雲の国風土記と称されることもあります。
伝染病の体験
2020年、全国的に新型コロナの流行が大きな流れとなりました。
八雲も生涯の中で2度流行病の感染を経験しています。(フロリダでマラリア、カリブ海で腸チフスに感染)
『流行病のきざし』
『目に見えない毒』
『天然痘』
などの作品を残しています。
松江に住んでいるときにはコレラ流行を体験し、『コレラ流行期』という作品を残しています。
しかし、感染症が流行する一方で、八雲が感じたのは”人々の底抜けの優しさ”でした。
親が亡くなった子供を引き取る人や子供たちを救おうと奮闘する校長先生の姿を見て、感銘したことを表現しています。
小泉八雲記念館の展示情報
松江市の小泉八雲記念館は、コロナ感染対策のため、休館しておりましたが、2020年6月1日より開館します。
また、2020年6月27日(小泉八雲生誕170回目の誕生日)から新たな展示が始まります。
小泉八雲「妖怪へのまなざし」、ぜひ足をお運びください。
八雲をもっと知りたい方へ
小泉八雲に関する書籍をご紹介。
八雲に関する書籍は小泉八雲記念館のライブラリーコーナーでも楽しめますよ!
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対談の後、小泉八雲記念館を再訪してみました。
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